968年12月10日、東京都府中市において東芝の府中工場従業員の冬のボーナス、約3億円がその輸送中に強奪されるという事件があった。
その後の真相は未だ謎に包まれたまま、昭和の事件簿のひとつになっている。
俗に「三億円事件」と呼ばれたこのミステリーは今でも映画や小説のモチーフとして使われていて、テレビドラマではTBSの「悪魔のようなあいつ」(久世光彦演出・長谷川和彦脚本)で最初に手掛けられ、時効成立の1975年に全17話で放送、主演はジュリーこと沢田研二という事件の犯人としてはあまりにも妖しく、それがゆえに見事に悩殺される。
共演には藤達也、荒木一郎、若山富三郎、篠ひろこ(看護婦役でどこに姿を現わすのにも白衣である)、大楠道代、那智わたる、浦辺粂子など、珍しいところでは尾崎紀代彦や伊東四郎、細川俊之などが顔を並べる。
実は先日、この「悪魔のようなあいつ」のDVDボックスセットを手に入れた。
放送された1975年のボクは中学生になりたての頃か、リアルタイムでこのドラマを母親とふたりで観ていた。
その時の衝撃を言葉ではうまく表せないが、心の中でこっそり<ジュリーになりたい>と思っていたに違いない(笑)。
原作は作詞家で有名な阿久悠、それが上村一夫の漫画で描かれ、TVドラマ化されたようだが、そもそも久世作品というのはロケではなくスタジオセットの撮影スタイルが有名で、「寺内貫太郎一家」や「時間ですよ」など数々のお茶の間撮影で名を売った人なのだ。
久世光彦さんは今年の三月にお亡くなりになられたが、今、このスタジオドラマを観ると、その昔、お正月に放送されていた「芸能人のかくし芸大会」の中のドラマ部門を思い出す。
セット撮影なんて当時はちっとも違和感がなかったのに妙なものだ。
それにしても現在、この手の映像を観ることはない。それはスタジオ撮影ということではなく、内容が超過激、放送禁止連発なのだ。
このシーンはマズイだろう?と思われるものが次から次へと映し出される。
再放送が一度もなかったというのも頷ける内容である。
まさしく70年代だな、と納得のボックスセット、結構いい値段だったけれど、鑑賞し終わって絶対満足!と呟いている。
沢田研二といえばグループサウンズ時代の代表格「タイガース」のヴォーカリストで、ソロになってからは歌謡界のトップに立ち、今で言うバンドスタイルやモード・ファッションにおいても、常に先を行きながらそれを創りだして来たスーパースターである。
若い人はジュリーを知らないだろうけれど、ボクは隠れジュリーファンとして(隠れる必要もないのだろうが、博多っ子は「ツヤばつけとろ?」と云われることを怖れている)このドラマの「加門 良」に憧れた。
まず、挿入歌として唄われていた「時の過ぎゆくままに」のドーナツ盤を買い、ギターの練習も始めた。
ボクが退廃的な音楽を好んで発表する理由は、この思春期に出逢ったドラマが大変に影響しているのかも知れないと密かに感じている。
ファッションにも拘りたかったが、当時の東京のスタイリストさんには敵うはずもなく、ジュリーの着ていた白いドレスシャツ、そこにサスペンダーというのがシンボルのように映ったので、まずはそれを真似てみようと思ったトモノウ少年だった。
しかしシャツは中学校で着ていたYシャツしかなく、本当はレース編みになっているアレが欲しいのに手には入らなかった。
あと、象牙のペンダントは絶対だったが、似たようなネックレスを母親も持っていなかったので千歳飴で造ってみたりする。
仕上げの最後に、ジュリーの持っていたパナマ帽なんてあるわけもないので、太一郎爺さんの被っていた「磯野波平ハット」を拝借して、斜めに被ってみる。
そして鏡に映してみれば・・・・・
全然違う・・・・。
それはやはりマヌケでしかない。
勿論、外を歩く勇気もないのである。(-。-)y-゜゜゜
♪ 行ったきりなら幸せになるがいい〜
―と帽子を飛ばしていたのはもう遠い昔・・・。
兎にも角にもジュリーはカッコいい!とそりゃ今でも思うのさ。
沢田研二がドラマの中で言っていた台詞
「三億円は俺の青春なんだよ!」・・・と真似てみる。
当時の三億円は今の時代のサマージャンボの3億円とは大いなる桁違いだろう。
<青春>という言葉は現代では死語になってしまった様子だけれど、ぼくらの時代には、確かに<青春>は生きていた。
青春ってすごいパワーがあったのだ。
歳を取ると何事も諦めるのが早くなるようで悲しい・・・。
若ければそれがどんなつまらないことであろうと、先が見えなくとも何かに向けて突っ走っていたのにね。
無論、今のように選択肢が多くはなかったから、コレシカアルメイ!なんてことで個性を探していたのだけれど、今は沢山ありすぎて、全てが曖昧すぎて、何と呼べば良いのか解からなくなってきている。
余談だけれど長谷川監督作品の「太陽を盗んだ男」という原爆を造る中学校の教師役のジュリーもオススメなのだ! |